2011年02月02日

ジョン・ハート著 ラスト・チャイルド

ブックオフでタイムセールをやっていて、半額だったのでまとめ買い。





●感想
1年前、ジョニー・メリモンの双子の妹アリッサが行方不明になった。ハント刑事を中心とした地元警察の必死の捜索も実らず、時間だけが経過していた。その間、ジョニーの一家に起こったことは悲劇としか言いようがない。母キャサリンは、事件当時アリッサを迎えに行くはずだった父スペンサーをなじり倒し、その責任に耐え切れなくなったスペンサーは、母子を残し蒸発した。キャサリンはスペンサーをなじったこと、アリッサを失ったことから、自分を完全に見失ってしまい、薬物依存、そしてお金を稼ぐこともできず、地元の有権者ケンに体を許して、住居と生活費を得ていた。ジョニーもケンに暴行されていた。
しかし、ジョニーはあきらめてはいなかった。アリッサを探すことも、メリモン一家を元に戻すことも。
そしてもう一人、ハント刑事もアリッサの捜査をあきらめてはいなかった。この一年間、アリッサの捜索に全力を注ぎ、自分の家庭も捜査にのめりこむことで崩壊していた。

ある日、ジョニーの学校の生徒ティファニーが行方不明になった。
その日はジョニーは学校をサボり、親友のジャックとともに川原にいた。ジャックが帰った後、ジョニーは猛スピードで駆け抜けるバイクと車を見た。明らかに追われている感じのバイクは車に追突され、運転手は橋の上からジョニーの前へと落ちてきた。ジョニーはその瀕死の男性を助けようと駆け寄った。その男性が、ジョニーに伝える。
「連れ去られた少女を見つけた。」

著者はジョン・ハート。アメリカ、ノースカロライナ州生まれ。大学を卒業後、銀行、証券ブローカー、法律家、ヘリコプターの操縦士、そしてイギリスのパブで働く。
2006年『キングの死』でMWA(アメリカ探偵作家クラブ)賞最優秀新人賞候補となり、2つ目の長編『川は静かに流れ』で2008年の同賞最優秀長篇賞を受賞した。ミステリ界の新帝王と呼ばれる。

(以下、ネタバレ有り)


橋の欄干から落ちてきたその瀕死の男性はジョニーに逃げるよう伝える。アリッサの詳細を聞きたいジョニーだったがふと状況が理解でき、恐怖のあまり立ちすくんだ後に走り出した。一目散に逃げるジョニーは、急に大きな男に担ぎ上げられた。必死に抵抗し、何とか担ぎ上げられた手を外し、ジョニーはさらに逃げる。そこへケンの車が止まった。ケンはジョニーに車に乗れという。ケンの車に乗ったジョニーは家に着き、自宅にパトカーが止まっていることを確認する。そこでティファニーが行方不明であることを伝えられる。さっき聞いたのはアリッサなのか、ティファニーなのかー。

瀕死の男性から聞いたことはアリッサのことだと考えるジョニーであるが、大人たちは諦めと希望を持たせられた後の絶望を味わいたくない気持ちから、ティファニーのことであると考える。結局みんなアリッサのことはあきらめてるんだと感じるジョニーは、これまで考えてきたことを実行することとする。これまで考えてきたこと、つまり自分自身で解決させることである。


前作『川は静かに流れ』や本著を読んだ方のコメントにもあるが、ジョン・ハートの著作では事件解決を目指すミステリの要素のほかに、家族が大きな要素を占めるようである。本著も同様にアリッサの事件を機に崩壊した家族(メリモン家、ハント家、そしてもう一つ)に関する家族の葛藤が、ストーリーの展開に対して重要な役割を担っている。メリモン家では父がいなくなり、母は精神が衰弱、ハント家では母が愛想をつかして出て行ってしまい、息子は父と会話をすることを避けていた。事件解決へ向けて事が進展していく中で、両家族はそれぞれ重要な場面に遭遇し、その関係を改善し始めるのであるが、それまでの家族の苦悩がとても重い。

また本著について言えば、物語を引き立て役としてインディアンや奴隷制度といった民族、過去の歴史にまつわる話も挙げられようか。冒頭のジョニーが鷹の羽を取りに行くシーンから関連しているわけであるが、子供だから考えそうなことという括りではなく、その後ティファニー救出をし、報道された結果として、そのような格好をする=正気ではないということで社会福祉局が介入したり(その結果二人の子供を失ってしまうと考えたキャサリンは立ち直ろうと努力する)、メリモン家と脱獄者リーヴァイのフリーマントル家の関係が現代に蘇る様など、話のスパイスとして、とても効果的だったと思う。


今目の前にあるものを大事にすることで、過去の傷も癒される。
信頼に値するであろうと思える相手は疑わずに信頼したほうがよい。

そんなメッセージを今の自分はこの本を読んで強く感じたかな。

非常に面白かったです。

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